イントロダクション
ローカル開発環境を含め、PHP開発全体を愉快なものにしようとLaravelは努力しています。Vagrantは、仮想マシンの管理と事前設定を行う、簡単でエレガントな手段を提供しています。
Laravel Homestead(入植農地、「ホームステード」)はパッケージを事前に済ませた、Laravel公式の"box"で、PHPやWebサーバ、その他のサーバソフトウェアをローカルマシンにインストールする必要なく、素晴らしい開発環境を準備できます。オペレーティングシステムでごちゃごちゃになる心配はもうありません! Vagrant boxは完全に使い捨てできます。何かの調子が悪くなれば壊して、数分のうちにそのboxを再生成できます!
Homesteadは、Windows、Mac、Linuxシステムで実行でき、Nginx Webサーバ、PHP7.1、MySQL、Postgres、Redis、Memcached、Nodeやその他、素晴らしいLaravelアプリケーションを開発するために必要な、クールなツールを全部含んでいます。
Note: Windowsを使用している場合は、ハードウェア仮想化(VT-x)を有効にする必要があります。通常、BIOSにより有効にできます。UEFI system上のHyper-Vを使用している場合は、VT-xへアクセスするため、さらにHyper-Vを無効にする必要があります。
含まれるソフトウェア
- Ubuntu 16.04
- Git
- PHP 7.1
- Nginx
- MySQL
- MariaDB
- Sqlite3
- Postgres
- Composer
- Node (Yarn、Bower、Bower、Grunt、Gulpを含む)
- Redis
- Memcached
- Beanstalkd
- Mailhog
- ngrok
インストールと設定
最初の段階
Homestead環境を起動する前に、VirtualBox 5.1とVMWare、もしくはParallels、それとVagrantをインストールする必要があります。全ソフトウェア共に簡単に使用できるビジュアルインストーラが、人気のあるオペレーティングシステム全部に用意されています。
VMwareプロバイダを使用するには、VMware Fusion/WorkstationとVMware Vagrantプラグインを購入する必要があります。無料ではありませんが、VMwareが提供する共有フォルダーは最初からよりスピーディーです。
Parallelsプロバイダを使用するには、Parallels Vagrantプラグインをインストールする必要があります。これは無料です。
Homestead Vagrant Boxのインストール
VirtualBox/VMwareとVagrantをインストールし終えたら、laravel/homestead
boxをVagrantへ追加するため次のコマンドを端末で実行する必要があります。boxをダウンロードし終えるまで、接続速度にもよりますが数分かかるでしょう。
vagrant box add laravel/homestead
このコマンドが失敗する場合、Vagrantを更新する必要があります。
Homesteadのインストール
リポジトリーをクローンするだけでHomesteadをインストールできます。自分の「ホーム」ディレクトリの中のHomestead
フォルダーへリポジトリーをクローンするのことは、自分のLaravel(とPHP)の全プロジェクトをホストしておくHomestead
Boxを用意するのだと考えてください。
cd ~
git clone https://github.com/laravel/homestead.git Homestead
master
ブランチは常に安定しているわけではないため、バージョンタグがついたHomesteadをチェックアウトすべきでしょう。最新の安定バージョンは、GitHubのリリースページで見つかります。
cd Homestead
// クローンしたいリリースバージョン
git checkout v5.4.0
Homesteadリポジトリをクローンしたら、Homestead.yaml
設定ファイルを生成するために、bash init.sh
コマンドをHomesteadディレクトリで実行します。
// Mac / Linux...
bash init.sh
// Windows...
init.bat
Homestead設定
プロバイダの設定
Homestead.yaml
ファイル中のprovider
キーは、Vagrantのプロバイダとして、virtualbox
、vmware_fusion
、vmware_workstation
、parallels
のどれを使用するかを指定します。使用するプロバイダの値を指定してください。
provider: virtualbox
共有フォルダーの設定
Homestead.yaml
ファイルのfolders
プロパティーには、Homestead環境と共有したい全フォルダーがリストされています。これらのフォルダーの中のファイルが変更されると、ローカルマシンとHomestead環境との間で同期されます。必要なだけ共有フォルダーを設定してください!
folders:
- map: ~/Code
to: /home/vagrant/Code
NFSを有効にするには、同期するフォルダーにフラッグを指定するだけです。
folders:
- map: ~/Code
to: /home/vagrant/Code
type: "nfs"
Note: NFSを使用する場合は、vagrant-bindfsプラグインのインストールを考慮してください。このプラグインは、Homestead下のファイルとディレクトリのユーザー/グループパーミッションを正しく維持します。
さらに、Vagrantの同期フォルダでサポートされている任意のオプションを、options
キーの下に列挙して渡すことができます。
folders:
- map: ~/Code
to: /home/vagrant/Code
type: "rsync"
options:
rsync__args: ["--verbose", "--archive", "--delete", "-zz"]
rsync__exclude: ["node_modules"]
Nginxサイトの設定
Nginxには詳しくない? 問題ありません。sites
プロパティーでHomestead環境上のフォルダーと「ドメイン」を簡単にマップできます。サイト設定のサンプルは、Homestead.yaml
ファイルに含まれています。これも必要に応じ、Homestead環境へサイトを好きなだけ追加してください。便利に使えるように、Homesteadは皆さんが作業する全てのLaravelプロジェクトの仮想環境を提供します。
sites:
- map: homestead.app
to: /home/vagrant/Code/Laravel/public
sites
プロパティをHomestead
boxのプロビジョニング後に変更した場合、仮想マシンのNginx設定を更新するため、vagrant reload --provision
を再実行する必要があります。
hostsファイル
Nginxサイトの"domains"に追加したサイトをあなたのコンピューターのhosts
ファイルにも追加してください。hosts
ファイルはローカルドメインへのリクエストをHomestead環境へ転送してくれます。MacとLinuxでは、/etc/hosts
にこのファイルがあります。Windows環境では、C:\Windows\System32\drivers\etc\hosts
です。次の行のように追加してください。
192.168.10.10 homestead.app
設定するIPアドレスにはHomestead.yaml
ファイルの中の値を確実に指定してください。ドメインをhosts
ファイルへ追加したら、Webブラウザーでサイトにアクセスできます。
http://homestead.app
Vagrant Boxの実行
Homestead.yaml
のリンクを編集終えたら、Homesteadディレクトリでvagrant up
コマンドを実行してください。Vagrantは仮想マシンを起動し、共有フォルダーとNginxサイトを自動的に設定します。
仮想マシンを破壊するには、vagrant destroy --force
コマンドを使用します。
プロジェクトごとにインストール
Homesteadをグローバルにインストールし、全プロジェクトで同じHomestead
Boxを共有する代わりに、Homesteadインスタンスを管理下のプロジェクトごとに設定することもできます。プロジェクトごとにHomesteadをインストールする利点は、Vagrantfile
をプロジェクトに用意すれば、プロジェクトに参加している他の人達も、vagrant up
だけで仕事にとりかかれることです。
Homesteadをプロジェクトに直接インストールするには、Composerを使います。
composer require laravel/homestead --dev
Homesteadがインストールできたら、Vagrantfile
とHomestead.yaml
ファイルをプロジェクトルートへ生成するためにmake
コマンドを使ってください。make
コマンドはHomestead.yaml
ファイルのsites
とfolders
ディレクティブを自動的に設定します。
Mac / Linux:
php vendor/bin/homestead make
Windows:
vendor\bin\homestead make
次にvagrant up
コマンドを端末で実行し、ブラウザでhttp://homestead.app
のプロジェクトへアクセスしてください。/etc/hosts
ファイルにhomestead.app
か選んだドメインのエントリーを追加する必要はあることを覚えておきましょう。
MariaDBのインストール
MySQLの代わりにMariaDBを使用したい場合は、mariadb
オプションをHomestead.yaml
ファイルへ追加してください。このオプションはMySQLを削除し、MariaDBをインストールします。MariaDBはMySQLとそのまま置き換えられる代用ソフトウェアですので、mysql
データベースドライバをそのままアプリケーションで使用できます。
box: laravel/homestead
ip: "192.168.20.20"
memory: 2048
cpus: 4
provider: virtualbox
mariadb: true
使用方法
Homesteadへグローバルにアクセスする
MacとLinuxシステムでは、Bashプロファイルへ簡単なBash関数を追加すれば実現できます。Windowsでは、PATH
に「バッチ」ファイルを追加すれば、行えます。以下のスクリプトはシステムのどこからでも、どんなVagrantコマンドでも実行できるようにし、自動的にHomesteadをインストール済みのディレクトリで実行します。
Mac / Linux
function homestead() {
( cd ~/Homestead && vagrant $* )
}
エイリアス中の~/Homestead
パスを実際にHomesteadをインストール場所を示すように調整してください。関数がインストールできたら、システムのどこからでもhomestead up
やhomestead ssh
のように実行できます。
Windows
以下の内容のhomestead.bat
バッチファイルを、マシン上に作成してください。
@echo off
set cwd=%cd%
set homesteadVagrant=C:\Homestead
cd /d %homesteadVagrant% && vagrant %*
cd /d %cwd%
set cwd=
set homesteadVagrant=
スクリプト例中のC:\Homestead
パスは、実際にHomesteadをインストールした場所を指すように調整してください。ファイルを作成したら、PATH
へファイルの場所を追加します。これでhomestead up
やhomestead ssh
のようなコマンドをシステムのどこからでも実行できます。
SSH接続
Homesteadディレクトリでvagrant ssh
端末コマンドを実行すれば、仮想マシンにSSHで接続できます。
しかし、Homesteadマシンには頻繁にSSHでアクセスする必要があると思いますから、ホストマシンから素早くHomestead boxへSSH接続できるように、上記の「関数」を追加することを検討してください。
データベースへの接続
homestead
のデータベースは、最初からMySQLとPostgresのために設定されています。より便利に使えるように、初めからフレームワークはこれらのデータベースを使用するように、Laravelの.env
ファイルで設定してあります。
MySQLかPostgresデータベースへ、ホストマシンからデータベースクライアントで接続するには、127.0.0.1
の33060
(MySQL)番ポートか、54320
(Postgres)番ポートへ接続してください。ユーザー名とパスワードは、両方共にhomestead
/secret
です。
Note: ホストマシンからデータベースへ接続するには、標準的ではないポートだけを使用してください。Laravelのデータベース設定ファイル中では、デフォルトの3306と5432ポートを使用することができます。Laravelは仮想マシンの内部で動作しているからです。
サイトの追加
Homestead環境をプロビジョニングし、実働した後に、LaravelアプリケーションをNginxサイトへ追加したいこともあるでしょう。希望するだけのLaravelアプリケーションを一つのHomestead環境上で実行することができます。新しいサイトを追加するには、Homestead.yaml
ファイルへ追加するだけです。
sites:
- map: homestead.app
to: /home/vagrant/Code/Laravel/public
- map: another.app
to: /home/vagrant/Code/another/public
Vagrantが"hosts"ファイルを自動的に管理しない場合は、新しいサイトを追加する必要があります。
192.168.10.10 homestead.app
192.168.10.10 another.app
サイトを追加したら、vagrant reload --provision
コマンドをHomesteadディレクトリで実行します。
サイトタイプ
Laravelベースではないプロジェクトも簡単に実行できるようにするため、Homesteadは様々なタイプのサイトをサポートしています。たとえば、symfony2
サイトタイプを使えば、HomesteadにSymfonyアプリケーションを簡単に追加できます。
sites:
- map: symfony2.app
to: /home/vagrant/Code/Symfony/public
type: symfony2
指定できるサイトタイプはapache
、laravel
(デフォルト)、proxy
、silverstripe
、statamic
、symfony2
、symfony4
です。
サイトパラメータ
params
サイトディレクティブを使用し、Nginxのfastcgi_param
値を追加できます。例として、値にBAR
を持つFOO
パラメータを追加してみましょう。
sites:
- map: homestead.app
to: /home/vagrant/Code/Laravel/public
params:
- key: FOO
value: BAR
Cronスケジュール設定
schedule:run
Artisanコマンドだけを毎分実行することにより、Cronジョブのスケジュールを簡単に行う方法をLaravelは提供しています。schedule:run
コマンドはApp\Console\Kernel
クラスの定義を調べ、どのジョブを実行すべきかを決定します。
Homesteadサイトでschedule:run
コマンドを実行したい場合は、サイトを定義するときにschedule
オプションをtrue
に設定してください。
sites:
- map: homestead.app
to: /home/vagrant/Code/Laravel/public
schedule: true
こうしたサイト用のCronジョブは、仮想マシンの/etc/cron.d
フォルダーの中に定義されます。
ポート
以下のポートが、Homestead環境へポートフォワードされています。
- SSH: 2222 → フォワード先 22
- HTTP: 8000 → フォワード先 80
- HTTPS: 44300 → フォワード先 443
- MySQL: 33060 → フォワード先 3306
- Postgres: 54320 → フォワード先 5432
- Mailhog: 8025 → フォワード先 8025
追加のフォワードポート
ご希望ならば追加のポートをVagrant Boxへフォワードすることもできます。プロトコルを指定することもできます。
ports:
- send: 50000
to: 5000
- send: 7777
to: 777
protocol: udp
環境の共有
共同作業者やクライアントと、現在作業中の内容を共有したい場合もあるでしょう。Vagrantには、vagrant share
により、これをサポートする方法が組み込み済みです。しかし、この方法はHomestead.yaml
ファイルに複数サイトを設定している場合には動作しません。
この問題を解決するため、Homesteadは独自のshare
コマンドを持っています。使用を開始するには、vagrant ssh
によりHomesteadマシンとSSH接続し、share homestead.app
を実行してください。これにより、Homestead.yaml
設定ファイルのhomestead.app
サイトが共有されます。もちろん、homestead.app
の代わりに他の設定済みサイトを指定できます。
share homestead.app
コマンド実行後、ログと共有サイトへアクセスするURLを含んだ、Ngrokスクリーンが現れます。カスタムリージョン、サブドメイン、その他のNgrok実行オプションをカスタマイズしたい場合は、share
コマンドへ追加してください。
share homestead.app -region=eu -subdomain=laravel
Note: Vagrantは本質的に安全なものではなく、
share
コマンドによりインターネット上に自分の仮想マシンを晒すことになることを覚えておいてください。
複数のPHPバージョン
Note: この機能は、Nginx使用時のみ利用できます。
Homestead6から、同一仮想マシン上での複数PHPバージョンをサポートを開始しました。Homestead.yaml
ファイルで、特定のサイトでどのバージョンのPHPを使用するのかを指定できます。利用できるPHPバージョンは、"5.6"、"7.0"、"7.1"です。
sites:
- map: homestead.app
to: /home/vagrant/Code/Laravel/public
php: "5.6"
さらに、コマンドラインではサポート済みPHPバージョンをすべて利用できます。
php5.6 artisan list
php7.0 artisan list
php7.1 artisan list
ネットワークインターフェイス
Homestead.yaml
ファイルのnetwork
プロパティは、Homestead環境のネットワークインターフェイスを設定します。多くのインターフェイスを必要に応じ設定可能です。
networks:
- type: "private_network"
ip: "192.168.10.20"
ブリッジインターフェイスを有効にするには、bridge
項目を設定し、ネットワークタイプをpublic_network
へ変更します。
networks:
- type: "public_network"
ip: "192.168.10.20"
bridge: "en1: Wi-Fi (AirPort)"
DHCPを有効にするには、設定からip
オプションを取り除いてください。
networks:
- type: "public_network"
bridge: "en1: Wi-Fi (AirPort)"
Homesteadの更新
2つの簡単な手順で、Homesteadをアップデートできます。最初にvagrant box update
コマンドを使い、Vagrant
boxを更新してください。
vagrant box update
次に、Homesteadのソースコードを更新する必要があります。リポジトリをクローンしている場合は、リポジトリをクローンしたもともとの場所で、git pull origin master
を単に実行するするだけです。
composer.json
ファイルにより、Homesteadをインストールしている場合は、composer.json
ファイルに"laravel/homestead": "^4"
が含まれていることを確認し、依存パッケージを更新してください。
composer update
旧バージョン
Tip!! 古いバージョンのPHPを使用したい場合は、Homesteadの古いバージョンを試して見る前に、複数PHPバージョンのドキュメントを確認してください。
Homestead.yaml
ファイルに以下の行を付け加えることで、Homesteadが使用するboxのバージョンを簡単にオーバーライドできます。
version: 0.6.0
一例:
box: laravel/homestead
version: 0.6.0
ip: "192.168.20.20"
memory: 2048
cpus: 4
provider: virtualbox
古いバージョンのHomestead boxを使用する場合は、互換性のあるバージョンのHomesteadソースコードへ合わせる必要があります。下図はサポートされているboxのバージョンを表し、使用すべきHomesteadソースコードのバージョンとPHPバージョンです。
Homesteadバージョン | Boxバージョン | |
---|---|---|
PHP 7.0 | 3.1.0 | 0.6.0 |
PHP 7.1 | 4.0.0 | 1.0.0 |
プロパイダ固有の設定
VirtualBox
デフォルトのHomestead設定は、natdnshostresolver
設定をon
にしています。これにより、HomesteadはホストのオペレーティングシステムのDNS設定を利用します。この動作をオーバーライドしたい場合は、Homestead.yaml
へ以下の行を追加してください。
provider: virtualbox
natdnshostresolver: off